扇風機つけてポラリスとの交信  鈴木加成太

扇風機の前で「ワレワレハ宇宙人ダ~」と声を震わせる……という、扇風機世代の人間にとっては常識中の常識であるネタを、これ以上ポエティックに仕上げた句をほかに知らない。ポラリスは北極星のこと。古来から旅人たちが見つめ続けてきた、世界の指標・ポラリスとの交信をかなえるのは、なんと日常卑近の扇風機。青い羽根が繰り出す、ややぶっきらぼうな涼しさを、宇宙から吹いてくる風だと信じてもいい。

「俳句四季」2017年7月号掲載、第3回俳句四季新人奨励賞作品「交信」より。第61回角川短歌賞受賞の歌人でもある。

燕の子そだつ音符のごと顫へ
トランプにうつすら甲虫の匂ひ
補助線を引けば流星また流星
手に拾ふ音叉はあきかぜの鎖骨
林檎より洩れて童話のまちあかり