鳴らすたびギターが思ひ出すキャンプ  鈴木加成太

「俺が思い出す」って、素直に言えや、と突っ込みたくなる愛らしさ。ギターを持ってキャンプに行き、夜にはテントのそば、星空の下でギターを弾いてみんなで歌った。帰ってきて、夏も終わって、もうたぶん銀杏も色づいて、そんなころ折々ギターを弾くたびに、あの楽しかった夏の夜が思い出される。ギターの音色が、キャンプを懐かしんでいるように感じる。

時系列に語ればそういうことだが、構成を組み直し、今ギターを鳴らしたところから、キャンプのあと何度もギターを弾いてきた時間がとびとびにあらわれ、その始発点としてのキャンプが下五の最後にあらわれる。青春ストーリーを周到に組み直した、緻密なプロットの光る句だ。

「俳句四季」 2017年7月号掲載、第3回「俳句四季新人奨励賞」受賞作より。刃を入れれば水のあふれ出そうな、果実のようにみずみずしい俳句を詠む人。