糸吐きて舟はくらげとなりにけり  小津夜景

なんとなく、ジブリ映画『風の谷のナウシカ』の王蟲を思い出したりして。

舟はふつう糸を吐かない。ということは、この舟はほんとうに舟だったのかどうか。でも、もうくらげになってしまったから、確かめようがない。ただ、くらげになるためには、糸を吐かなければいけないような気がするし、くらげは昔、舟だったようなさまよい方をする。
「となりにけり」という大仰で無意味なまとめ方が、この句の場合は、不可思議さをそのまま伝えてくれている。

「俳句」(角川書店)2017年7月号「若手俳人競詠10句」より。