接着剤丸く出てくる青葉風  小野あらた

この徹底した手触り感。「丸く」がリアルで、同時にどこか人懐っこさを感じさせる表現だ。出てきた接着剤の頭が、青葉風をすごく新鮮に感じているような、無生物に共感してしまうような、世界への親しさがある。トリビアルな出来事を十七音の詩になると信じて一句に仕立て上げたそのこと自体が、この世界への絶対的な信頼の証でもある。反転させれば、それは、大きな物語の拒絶、ということでもあるのだろうけれど。

「俳句」(角川書店)2017年7月号「若手俳人競詠10句」より。