夫と同じくらい幸せ鳳仙花   折勝家鴨

〈幸せ〉だと言っているにもかかわらず、漂うこの不穏さ。
「ああ良かった、うちの妻は幸せなのだ」なんて思ってしまった夫よ、妻の顔をよく見よ。
幸福度を相対化する基準を〈夫〉に持ち、同調することを選んだ妻の表情を。
いや、「同じ幸せ」ではなく〈同じくらい幸せ〉であるから、
それぞれにお互いの知らない別の幸せを味わっているのかもしれない……、とどんどん深読みしたくなる。
「妻と同じくらい」ではこのもやもやは味わえないかもしれない。
葉の間からながらビビッドな紅の激しい〈鳳仙花〉の姿もなんだか不穏。弾ける種も激しい。
シンプルな言葉ながら、読者を惹きこむ強さのある一句。

『ログインパスワード』(ふらんす堂、2017)より。