逃げきれぬお前だ合歓を点し消し 竹岡一郎

ゾッとする。
逃げているのに逃げきれない。しかも、「お前だ」と自分を名指して追いかけてくるのだ。
合歓の花は細かく、その花一つ一つが灯りなのだと言われると、妙な納得感がある。萩尾望都の描く夢のような花。灯して消して、居場所を知られない為に夜に溶ける。夢であることを祈る。

週刊俳句535号「バチあたり兄さん」より