「ゆつくり」といっても、いろんなゆっくりがあるけれど、それを、ロールキャベツが煮えてゆくスピードだと言いあらわした。キャベツでぐるぐるくるんだように、かなしみをくるんで見えなくして、しばらくは忘れた気になれたのに、やっぱりゆっくりとしみだしてくる。煮え上がったおいしいロールキャベツを食べながら、えんえん泣くのだろう。
こういう句の「キャベツ」は夏の季語なのかな。ロールキャベツは冬っぽい気もするし。歳時記のキャベツというカテゴリーに接続させつつ、一句としては季節感を読み取らない、のがいい気がする。
句集『夜の鹿』(青幻舎、1999)より。