蛍かと思えば二つかなしい眼 前田霧人

暗闇に浮かぶ二つの光は実は眼だったという、ホラーな句だ。しかも、その眼が何を訴えているかというと、かなしみなのである。蛍かな?とわくわく目を凝らした作者は、声も出せぬほど驚いただろう。泣いてはいない、かなしい眼。見つけたくなかった眼。

句集『レインボーズ エンド』(2016年 霧工房)より。