食べるのが早くて暇で暮の秋 小野あらた

昔から食べるのが遅い私は、給食でも家でも苦労した記憶がある(兄弟が多く早い者勝ちのお代わりにありつけなかったり)。逆に食べるのが早い人は、確かに暇なのだ。その早さ故に出来た時間は予定のあったものでもなく、空虚であり、少し寂しい。この寂しさは秋のせいもあるだろうと、作者は変わりゆく季節を窓に見るのだ。

句集『毫』は食べ物の句が多いが、彼が食べ終わった後に感じる虚無感が出ているようで、中々興味深い句だ。

句集『毫』(ふらんす堂 2017年8月)より。