物差しのつめたさ伏せし夏景色  川口真理

暑い夏に、ものさしがひんやりと冷えていることの心地よさ。たぶん、透明の物差しだと思った。透かせば夏景色も見える。伏せてただ、今は夏景色の前に立つだけだ。

眼前にひろがる夏景色を、物差しではかることはできない=人間の尺度で判断することはできない、という象徴的な意味がほのかにひらめく。「つめたさ」に、その批評的な捉えかたを感じ取ることもできるか。

「俳句四季」2017年11月号より。