稲妻や草の匂ひのスニーカー  大木あまり

さっきまで野を歩いてきたスニーカーが、玄関で、草の匂いを立てている。激しい雨は、稲妻は、今頃あの野原を真っ暗に輝かせているか。秋草はみな雨風に倒されているか。軽いタイムラグの生む、運命とのすれ違いの匂いが、生きているということの本質に触れてもいて。

「俳句あるふぁ」2017年12月・1月号(毎日新聞出版)より。創刊25周年記念特別号。