冬の蝶いづこもくらき夜明にて  飯田龍太

宇宙で最も暗い夜明け前
パールをこぼしにハイウェイに飛び乗る
何だか不安なんだひどく淋しいんだ
闇は孤独を包む貝殻さ

目がくらむ朝に溶けてしまう前に

パール / THE YELLOW MONKEY(youtube)

冬蝶が静かに呼吸している。冬の夜明けはどこも暗い。ひとすじの明るさがあれば、そこへめがけて最後の力を振り絞るのだが、何も始まらない、すべてが終わってしまったような、寄る辺なき夜明け。「にて」の意味。「いづこもくらき夜明」であることによって、冬の蝶が冬の蝶たらしめられている。シンプルな情景描写のようで、その実、この世界の本質を見つめる、哲学的一句。この、冷たい夜明けに、さあ、どうする。冬蝶よ。そして、私よ。