柚子一つ机にありて落ち着かず  吉田成子

机の上に柚子がある。黄色くって、明るくって、ちょっと発光しているようだ。その柚子の存在感が気になって、なんとなく落ち着かない。そんな風に読んだ。落ち着かないのには、別の原因があってもいい。誰かの電話を待ってそわそわしているときに、妙に卓上の柚子が気になる、なんであんなところに置いたんだっけかな、なんてことはままある。もっと見方をかえれば、柚子の実は膚がぼこぼこしているので、柚子自身が、机の平らに落ち着かないのかも。

句集『日永』(ふらんす堂・2012年4月)より。