2014年8月30日

龍ひそむインク壺てふその淵に

メーカー :Waterman
名   称:Serenite, Special Edition, 蒔絵「龍」、限定 52/60
ペン先  :18K, M
軸など  :樹脂に蒔絵仕上げ(東藤達也氏のデザイン)
吸入方式 :カートリッジ/コンバーター両用式
購入日時 :2013/9/2

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いよいよ世界的ブランド、ウォーターマンの登場だ。1883年に毛細管現象を利用した万年筆のインク供給機構を発明したルイス・エドソン・ウォーターマンが翌1884年に創業。保険の外交員をしていた彼は、ある大口契約の書類にサインする際、契約書にインク漏れによる染みを作ってしまいライバル会社に契約をとられるという苦い経験をする。それがきっかけで現在普通に使われている万年筆の仕組みが出来上がったのだから人生何が起こるか分らない。世界で初めてクリップ付きのキャップを開発したのもこの会社。その後1926年にウォーターマンは本拠をアメリカからフランスに移す。今ではフランスらしいエスプリに富んだデザインで知られる。

 このセレニテもそうだ。まるで日本刀のように優雅な曲線を描くシルエットは万年筆を集め始めた頃から憧れであった。たまたま中古品ながら蒔絵ものがネットに出され手に入れることができた。手に取ると想像したよりのずっと軽いのに驚いた。セレニテは胴軸とキャップがずれないようにカチッとはまる仕組みなのだが特にここではそうでないと龍の絵がずれてしまう。

 蒔絵の万年筆は日本のお家芸と言ってもいい。しかし欧米のコレクターは蒔絵万年筆が好きなようで火付け役になったナミキ(パイロット)の豪華なペンに追随するようにペリカンやパーカーなど欧米のメーカーも日本人の職人を使って蒔絵万年筆を作り出している。Danitrioというアメリカのメーカーのものは工芸品として実に高品質だ。

 ただ筆者自身は蒔絵には余り食指が動かない。美しいとは思うが、自分がそれを使って字を書く所を想像できない。このペンもたまたま蒔絵だっただけで純粋にセレニテが欲しかったのだ。