短距離走者を枯野の真ん中に
沢木耕太郎が来る!という、なぎささんからのLINEの誘いに即刻のって、堀之内の市民会館に講演を聴きに行く。
沢木さんが壇上に現れると、「ああ沢木耕太郎だな」と感心した。痩身で、光沢のある黒いスーツ姿。しっかりと脇を締めた身振り手振りもきれい。
高倉健とのエピソードや、カジノゲームのバカラに嵌まっているなどのめくるめく話に、自分がひどく田舎モノの気分になってきた。
『深夜特急』を私も読んでいた。当時勤めていた会社の若い同僚が文庫本を貸してくれたのだ。一冊読み終えると、また次を持って来てくれるのだった。京極夏彦の「姑獲鳥の夏」他京極堂シリーズも彼女から借りて読み耽った。
わいわいやってる私の隣で、静かに速やかにそして正確に事務をこなしていた。
彼女が亡くなったということを、つい最近人づてに聞いた。社内恋愛をして寿退社し、子どもに楓子(ふうこ)という名前をつけたまでは聞いていた。まだ、四十才半ば。
優秀な彼女が大好きだった沢木耕太郎を、眩しくたっぷりと眺めた。