紫陽花や笑つてほしいから笑ふ 江渡華子

笑って欲しくて自分から笑う。
この句の対象になっているのは作者の赤ちゃんだと思うと、そこから見えてくるのは新米ママが我が子をあやして奮闘している姿。母の笑顔に誘われて赤ちゃんも笑顔になる。紫陽花の弾むような毬は赤ちゃんの姿とも重なりつつ、紫陽花の奥に雨の匂いを感じると、ちょっと手一杯で泣きたくなるときもあるであろう母の胸のうちを思わせもする。
そんな母子のひとこまを詠まれたこの句はそれだけで充分に素敵なのだが、一句はそこに留まらずに読む人の心に届くところがいい。
「笑つてほしいから笑ふ」。
誰かを笑顔にさせたいとき、こんな向き合い方があることに、ふと気づかせてくれる。