垂直に手を挙げにごり酒頼む   江渡華子

「変」っていうのはなかなか難しい概念で、往々にして他者への批評において語られる「変」っていうものは「個性」を言い換えたものになりがちだ。「君って変だよね」という言葉が時に褒め言葉になってしまうのも、その辺が効いているんだろう。
でも、華子さんの「変」さというのは、言葉を選ばずに言うと、ちょっと読者(僕)を困惑/怒らせかねないところすらあるものだ。
掲句の「変」なポイントは「垂直に」(誰にでも分かると思うけれど)。「まつすぐに」「ぴんと」などなら、僕もまだ許せるけれど、「垂直に」と言われたら思わず水準器を取りにデスクの抽斗まで歩いて行かざるを得ない。でも、俳句になじまない言葉を無造作に扱っているように一見思えて、この句の「垂直に」は考えてみると一句に必要十分な言葉となっている。摩擦の多い言葉を使うことで、その情景の面白さ(たぶんその居酒屋でも笑いが起こったことだろう。注文がにごり酒であることも相まって。)が保証される効果があるのだろう。
僕はこういう「変で良い」俳句を「ほつれた俳句」と呼んでいる。次回はもう一句、華子さんの「ほつれめ」を紹介したいと思う。

(「ドライブ」2012.10より)