2014年8月31日

良夜の字万年筆の書かしめし

メーカー :Louis Vuitton
名   称:Cargo Alligator, Burgundy
ペン先  :18K, M
軸など  :ワニ革
吸入方式 :吸入式
購入日時 :2014/5/6

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シリーズ最後を飾るに相応しいペンである。

 初めて本でこの万年筆を知った時は大して欲しいとも思わなかった。葉巻にそっくりでずんぐりむっくりな外観が余りかっこよく思えなかったのだ。俄然欲しいと思うようになったのは昨年開業した松屋銀座店で実物を目にしてから。その頃にはコレクションも400本を越え、大概の万年筆には驚かない自信(?)があった。だがこのカーゴ・アリゲーターには驚かされた。

 まずはワニ革を使っていながら、どこに継ぎ目があってどうやって巻いてあるのか分らない加工技術の確かさ。さすがは高級革製品のブランドとして世界に冠たるルイ・ヴィトンだけのことはある。だがもっとすごいのはメカニックの技術の高さ。メカニックと言えば断然ドイツだし、モンブランやペリカンには敵うまいと思っていたのだが、このペンの吸入方式はそれらに勝るとも劣らない。ばかりかキャップをした時に主軸の両脇にあるポッチが押されてインクタンクとペン先を遮断し漏れを防ぐという画期的な仕掛けには仰天した。実際の書き味も実になめらか、ペンは結構重いのだがその重みだけですらすらと書けるのでちっとも重さが苦にならない。

 単なる女性に人気の高級ブランドとしか思っていなかったヴィトン恐るべしとあらためて認識した瞬間だった。旅鞄の製作でメジャーとなったヴィトンは1990年代から文房具に力を入れ始めた。「書くこともまた旅である」との哲学はとても魅力的である。
このペンは第2句集出版に対する自分への労いのつもりで買った。もちろん毎日使っている。専用の少々高価なインクを充填して。筆者にとってはこれこそ究極の万年筆なのである。