2017年3月31日

綿菓子をさはるくちびる桜冷え

会いに行くときは夜行バスをよく使った。

新宿へ向かう夜行バスは発車すると程なくして消灯し、携帯電話の使用が咎められた。

私は「おやすみ」とだけメールを送って、シートに横になった。カーテンの隙間から漏れる街の灯で何かできないか考えたが、あまりいい句ができた記憶はない。
大阪を出たときは蒸し暑かったが、真夜中のサービスエリアの夜気は少し冷んやりしていて気持ちよかった。多分この時間帯なら秋の星座がでているはずだが、あまりよく分からなかった。バスの不自由な眠気を少し追い払って、携帯を見るとメールが届いていた。
6時前の新宿は、熱帯夜に朝の涼しさを混ぜたような水色で、コンビニのおにぎりを食べたいような気持ちになったけど、「朝ごはんを一緒に食べよう、おやすみ。」というメールを読み返して、京王線のホームに向かった。
今では子供も生まれたので、実家へ帰るときは新幹線を使うしかないが、東京と京都の間にこういう夜があったことは、多分忘れないと思う。
一ヶ月間ありがとうございました。