2016年8月30日

目隠(めかく)しの襷(たすき)を流(なが)す星呂(ほしろ)かな

高校生になって俳句を書きはじめた僕は地元の新聞の子ども向けの俳句欄に投句していたが、僕の作品がぽつぽつと選に入るようになった頃、両親が僕の作品を読んでいることに気がついた。僕は恥ずかしさのあまり、その後投句をやめたように装うことにした。本名と偽名の両方で投句し、徐々に偽名での投句量を増やすようにしたのである。
それからは、たとえばある週は(投句欄はたしか毎週火曜掲載だった)僕が本名で、翌週は偽名で掲載されるようになっていった。紙面上ではあたかも僕とは異なるもう一人の人間がいるかのような状況が生まれたのである。僕はこんなことで僕の両親が騙されるものなのかどうか、疑わしく思っていたけれど、最近お前の名前を見かけなくなったなと父が言うのを聞いて、なんだか拍子抜けしてしまったのを覚えている。
このときに生まれた偽名が「外山一機」だった。