2013年7月30日

Japanese eggplants
never clear of
nuclear plants

意訳:原発を離れられない日本国茄子(じゃぱなすび)

今は焼茄子の美味しい季節。あつあつで食べるのも良いが、やはり冷やして食べたい。茄子、醤油、薬味という日本ならどこでも手に入る食材で簡単にできてしまうのも嬉しい。コツは、焼く前に茄子の尻から蔕に向けて串(菜箸や金串)を差し込み、穴を開けること。火の通りが良くなるし、破裂してしまうのも防げる。

原産地はモンスーン気候地帯であるインドとされていて、蒸し暑い日本の夏にも適していて、わが国では夏の季語とされる。ただ、立秋は蒸し暑さの極致である陽暦8月上旬であるから、作者としては(夏の季語であることに異存はないが)どうも茄子は秋の食材というイメージがあり、秋の季語である秋茄子の方がしっくり来る。もちろん、英語のeggplantは季語ではない。

茄子の品種は180種類を超えるらしいが、大まかには3種類ある。日本では「一般的な茄子」、「米茄子」、「白茄子」と3種類を呼ぶが、北米ではそれらを「Japanese eggplant」(東アジアに多い細長い茄子は皆この名前で呼ばれている。実際には、茄子にジャポニカ種等と云うものは存在しておらず、数十種類に分かれている)、「eggplant」(自分たちにとっては米茄子こそが一般的な茄子)、「white-skinned eggplant」等と呼んでいる。英語eggplant(「卵の植物」の意)の語源は、米茄子の卵形か白茄子の卵の殻色か定かではないが、たぶん前者。

掲句のJapanese eggplantは、上述のように、東アジアに多い細長い茄子(日本で云う「一般的な茄子」)の事であるが、「日本国の茄子」というニュアンスも含んでいる。名詞plantには「植物」という意味の他、「施設」という意味があり、茄子を意味するeggplantのplantは前者、原子力発電所を意味するnuclear (power) plantのplantは後者。同じく句中で韻を踏むclearとnuclearの方は無関係。詩の場合、前置詞ofは普通は行頭に持ってくるが、今回は敢えて3行目の頭にせず、2行目の末に持ってきた。句跨りのような効果が出るし、clear ofというのが一つの語句であるからである。それを思うと、和訳の方は五七五になっているが出来が悪い。原句のしつこい押韻を再現できていないし、Japanese eggplantのニュアンスも消えてしまっていて、ただの反原発詠に成り下がっている。「親の小言と茄子の花は千に一つの無駄もない」という言い習わしがあるが、ハイクの翻訳においては千に九百九十九の割合で、原句の韻律やデリカシーが無駄になってしまう。