そら豆はすこやかな胎児のかたち
スーパーにそら豆が並んでいて、安かったので買った。毎年一度は食べているはずなのに、そら豆の皮の貫禄には毎回おどろかされる。すこし硬い皮の中は綿のようにふわふわとして、大事に楽器を仕舞うためのケースに似ている。大切そうに眠っている豆を取り出すとき、しつれいします、と言いそうになる。皮から取り出したばかりのそら豆はしっとりと濡れており、思わずつまんだまま眺めてしまう。ザ・豆、という見た目である。海老とともにさっと炒めてカレーにのせて食べた。なるほど、これが「まことに青き味」か。火の通ったそら豆は歯に触れただけでほろりと崩れて甘く、少しだけ渋い。わたしもきっとまだ、まことに青い。