何年か前、開成高校での句会で紗希さんとご一緒したことがあった。その時僕は、
白桃が漫画の中の部屋にある 大祐
という句を出し、紗希さんに取ってもらったことを覚えている。
二次会の会場である近くの居酒屋へ歩いてゆく途中で、紗希さんは確か、「白桃だと三鬼の句があるように象徴性を持った季語だから、もっとフラットな季語がよいかな」という趣旨のことを言ってくれた。僕は、「じゃあ梨とかがいいですかねえ」などと話しながら、紗希さんは句の象徴性を制御するタイプの俳人なのだなふむふむ、などと考えていた。
さて、忌日俳句は大きな象徴性を持った季語のひとつである。紗希さんの忌日俳句の料理の仕方は、やはり忌日に無理をさせないタイプの句作りであるようだ。無理をさせない。そういう意味では、紗希さんの句は「作者にも読者にも無理をさせない」タイプの句だと言える。昔どこかで、歌手のaikoはメロディーの展開が天才的に上手いという意味合いの評を読んだことがあるが、紗希さんは句の中の言葉と言葉の展開の仕方が非常に巧みだ。読者に無理をさせずに実は言葉の急カーブを曲がらせてくれる。