朧夜という、永遠とも紛う時間のエアポケットの中で、まばたきという瞬間を刻み続ける孤独。
まばたきにうるおう瞳に映るのは、やはりうるんだ朧の夜のつややかな闇だ。
「這ひのぼる」と言ったことで、上へ上へとのぼってゆく意識が、空に満ちる朧の大気へとつながってゆく。
「の」「を」と、助詞をひとつひとつ置きながら、確実には切らないでゆるゆるとつなげるその語調も、「這ひのぼる」水のなめらかな動きを伝える。
「週刊俳句」2017年5月7日 作品10句「ばらばらな風景」より。この句や〈首すぢの熱さへずりに曝しをり〉など、言葉の技術を身体感覚が上回る句に、可能性を感じた。