週刊俳句235号『海』より。
「でも」という反語で始まる印象的な句だが、この「でも」は成功しているのだろうか。そもそも、何に対しての「でも」なのか、悩む。作品10句を読むと、被災地の句が並んでいることがわかる。逃げることや逃げないことは、文字上で見る以上に深刻な問題だろうに、この句を見ると、句から湿度が感じられないからか、あまり深刻に思えない。
「僕」はどうしたいのだろうか。逃げたいのだろうか。逃げたくないのだろうか。その意志さえも感じ取ることができないまま、悶々とする。意志があれば「でも」の前の言葉もわかるのに、このままだとわからない。
結局、「僕」は「僕の無力さ」に向き合っているというだけなのだ。それが月夜という普遍のものによって表れている。虚しさは充分なほど伝わるのに、「僕」がどうしたいのかが見えず、不安になってくる句だ。