シンプルな俳句だ。マンゴー色の絵筆がそこに置かれている、ただそのことの価値。さわやかで濃厚なオレンジ。その色彩に射抜かれる。
『俳コレ』(邑書林、2011年12月)より。そのほか、坂西敦子100句よりいくつか。シンプルなことばで書かれた独特の感覚。決して奇想ではないのだけれど、なんだか敦子さんの俳句の読後は、目からうろこが落ちたような、世界がちょっとだけ新しくなったような、不思議な感覚になる。そうそう、コロンブスの卵みたいなところがある。
ひんやりと手鞠に待たれをりにけり
雛飾る雛しまひたくなりながら
早春やカルボナーラを巻き上げて
春眠の眉飛び去つてゆきにけり
金魚玉見ながら水を飲んでゐる
焼藷の大きな皮をはづしけり