2012年4月30日

おほいなる空白のこる虹の後

 その奥から何か尊い御顔でも顕れ出てきそうな、おごそかで濃い虹であった。
 ようやく明るみの兆しはじめた雨上りの大気に、巨大な半円をえがく七色の幻。
 畦に立ち尽して息をのむ私の前でひとしきり夢色の環を燃えたたすと、やがて巨きな光の悪戯は跡形もなく消え失せた。
 先ほどまで七色の帯のあったところには、ぶ厚い雨雲がまるで巨大な布団のように広がるばかり。
 それはまさに、空白という言葉で表現するしかない眺めだったのである。