2015年9月20日

鳥の発つまでを木の実の降る時間

西日暮里駅を降りて、母校の文化祭に行く。毎年2万から3万人くらいは来るらしいので、周辺の飲食店などは便乗をしてひと稼ぎ狙っている。特にファミリーマート西日暮里四丁目店。彼らは什器を店頭に出してファミチキを大量に売りさばこうと眼をギラギラさせているのだ。近くのマクドナルドなんかは母校の学生による被害ばかり受けているが、一方でこの店は被害だけでなく最も大きな恩恵も受けている店舗だと思う。高校は土曜日も正午まで授業がある。授業が終わって数分すると、ファミリーマート西日暮里四丁目店には昼食を求めに学生が殺到する。男子校なので並んでいる者はみな男子。店舗内は異様な雰囲気に包まれる。そうして、店員の連携は次第に怒号に近づいてゆくのだ。

先日、高校を卒業してからはじめて土曜日の11時半頃にファミリーマートを訪れた。店舗の白い空間は、戦の前の静けさに包まれていた。レジの横からは、ファミチキを揚げる音ばかりが聞こえる。菓子パンを補充している店員のひとりに、バイトリーダーらしき女性が叫んだ。

「開成が来る前に並べなきゃいけないんだよ! 早くして!」

かつてぼくが土曜日のファミリーマートで昼食を買う数十分前にも、こんな修羅場が毎週のように繰り広げられていたのか。ぼくは戦慄した。正午過ぎの混乱をはるかに凌駕する緊張が、店内に充ちていた。ファミチキを買って、そそくさと店から脱出した。

いつも思うが、西日暮里四丁目店のファミチキは他の店舗のファミチキよりもサクサクしていて美味しい。五六年前に生徒会が店長と会談をするという校内広報紙の企画があったが、その際に店長が「皆さんが大量に買っていってくれるので、揚げのサイクルが早まって揚げたてを提供しやすいためです」と答えていた。つまり、ファミチキが多く売れるので、揚げたてを提供しやすく、それが他店舗より美味しいため需要が高まる、という好循環が生まれている。母校とファミリーマート西日暮里四丁目店との間には、幸福な経済関係があったのだ。両者は今後もしばらく、この関係を保ち続けるだろう。そして店員は誰も憎むような貌つきをしながら「ありがとうございましたーまたお越しくださいー」と呪詛を唱え続けるのだ。