2013年10月11日

夜や長し『眞神』と果てしなき対話

『眞神』(1973年刊)は、三橋敏雄(1920~2001)の第2句集。
僅か130句で構成されている。

この句集の作品については、何度読んでも、なぜこういった言葉の斡旋や繋がりが可能となるのか、実に不思議な思いのするところがある。
いつだったか、ピアノを演奏するミュージシャンが、海外のあるミュージシャンのピアノの演奏を見て「なぜこの鍵盤の次にあの鍵盤が来ることになるのか、信じられない思いがした」と語っているのを読んだことがあるが、まさにこの句集の作品にしても、同じような感想を抱いてしまう。

ともあれ、『眞神』は、作者の叡智が凝縮されて成った1冊といえるはずである。

以下は、本書よりの抄出。

鉄を食ふ鉄バクテリア鉄の中   三橋敏雄

晩鴉撒きちらす父なる杭ひとつ

こぼれ飯乾きて米や痛き秋

日にいちど入る日は沈み信天翁

草荒す眞神の祭絶えてなし

海ながれ流れて海のあめんぼう

絶滅のかの狼を連れ歩く

擂粉木の素の香は冬の奥武蔵

緋縮緬噛み出す箪笥とはの秋

わたる日はひねもす照れり喉は花