今回は、「光」の句。というのも、紗希さんの句には「光」をモチーフとした句が多かった。たしかに。句集も、タイトルから「光」まみれだった。掲句は、まさに紗希さんの句集の表紙を思った。
一本道が、急に、ひらけた。そのすこしの驚きと、気持ちの高ぶりがみえる。兎はその野でふと見つけたのかもしれないし、ずっと追っていたのかもしれない。どちらにせよ、ただ、そこに兎がいるのだ。兎の白さ、小ささ、愛らしさが胸いっぱいに迫ってくる。「いま光」という措辞は臨場感があって、その場には私と兎だけしかいないかのような、そんな緊張感も与えてくれる。弱々しさと強さをもつ句だ。
紗希さんの句というと、少女性ということがよくいわれるが、この句もそんな感じがある。この句の主体は少女な気がするし、少女であってほしいと思う。
まどのひかり雪がぜんぶ溶けたら言うね 神野紗希
この句も、少女だ。光の中にかすかに見える少女の姿。紗希さんの句によくあらわれ、そのたびに私たちを楽しませてくれる。