空缶にちちろ一匹分の闇  神野紗希

公園の茂みに、空缶が転がっている。蟋蟀の鳴き声も聞こえてくる。もしかしたら、この空缶の中に蟋蟀がいるのかもしれない。そんな、どこにでもある秋の景色。

ただ、「闇」という言葉はすこし言い過ぎな気もする。空缶の暗さに、そこまでの果てしない深さはないだろう。それに、直前の「一匹分」という言葉には軽味があって、この言葉のつながりには、唐突なギャップがあるといえる。しかし、それが、読者に深い印象を与えているのではないだろうか。「闇」に吸い込まれてしまうような、怪しい魅力を、句に加えている。

紗希さんの句にみられる、実景とは別の、でも明らかに存在するイメージ。それは、こうやってちちろを思うのと同じように、つくられているのかもしれない。