見た事も行った事もある、実家だもん。前半戦なり

実を言うと前回の二回分のスペシャルキリン(初期麒麟句文集)は今回の分を書く時間を作るために書いた、なんというか、そう、時間稼ぎなんです。時間稼ぎのつもりが楽しくなって、あれはあれで時間が掛かっているんですが…。

8月13日の虫さんの誕生日がすぎると(おめでとーございます♪)、8月14日、麒麟めの誕生日です(瓜人さんも同日)。

いやー、29にもなってなんですが、人に誇れる物が思い付かない…、うーん、知恵もなし、金もなし、体力もなし…、モテず、酒呑みで…、俳人で…、うーむ…、ないなぁ…

いや、あったぞ、あった!

実家が尾道だってこと!

と前書きがまた長いわけですが、僕がどんなにヒドイ生き方をしても、東京の人達になんとなく負けねぇぞと思えるのは、故郷が気に入ってるから、という部分があるのでしょう。

西村が辛い時はいつも麒麟が助けてくれます。麒麟が弱っている時は尾道が癒してくれます、わかりにくいね、えーと、良いとこなんです、僕の田舎。

という事で今回のスペシャルキリンは尾道紹介、広島や鞆の浦も紹介してみましょう。

いったいどこまでホントでどこまで嘘か、なんて野暮は聞かないように!句碑が見つからないとか言って市役所に電話したりしないように!

野暮はいけません。はい、始めるよ。

東京から尾道へ新幹線で帰る時は、いつも東京~福山の切符を買います。

いつもあの名句が思い出されます。

●髪の毛を黒に戻して帰省かな
村上鞆彦

茶髪から黒髪に戻し帰省していく麒麟めを憐れに思い詠んだと言われている句です。

今回は福山から鞆の浦へ

福山からバスに乗るんですが、これが揺れる…、もうものすごーく揺れます、伊豆かここは?ってぐらい揺れるので酔い止めを飲んどいた方が良いと思います。

福山は広島で二番目に大きな街なんですが、バスに乗ってしばらくすると鞆の浦なんだから驚きます。鞆の浦ってあれです、あのポニョのとこです。

いやー、海が水色で気持ち良いですなー、あー綺麗

鞆の浦と言えば大伴旅人の

吾妹子(わぎもこ)が見し鞆の浦のむろの木は常世(とこよ)にあれど見し人ぞなき

の歌と、その記念碑の横に平成24に麒麟めが無許可で建てたと伝えられる句碑

●潮待ちの古き港や氷旗
村上鞆彦

が有名ですね、ちなみに鞆彦さんの鞆は鞆の浦とは無関係です、でもこれは良い俳句なのであります。

ちなみに

●島の秋覗けば何かゐる海に
西村麒麟

というのは鞆の浦から船で行ける弁天島で作った俳句であるから何か建てようよ、句碑とかさ、という話をもちかけ島民にグーで殴られたのも随分古い逸話である。

お腹が空いてふらふらと入った店で食べた鯛めしと蛸の刺身が実に美味、瀬戸内に行ったら、蛸の刺身を食べるのが賢いと思います。こりこりうまいのよ、これが。あと、鰻より穴子ね、西は。

さて鞆の浦に着いたらどんなに時間はなくても「対潮楼」にだけは行こう、ここから見る景色はすんばらしい。何がすんばらしいかと言えば、どうも大昔に朝鮮から来た偉い人(朝鮮通信使)が対潮楼に寄った時に、「日本で一番すんばらしい」と言ったとかなんとか、それ以来、対潮楼は「日本一の景色」を看板に今でも観光客が絶えないんであります。

ビールも飲んだし、尾道へ戻りさっさと眠ろう…。

翌朝

ふわ~あ、ねむねむ。10時30ぐらいになったら、ラーメンを食べに行こう、そう、尾道ラーメンへ、11時オープンの「朱華園」は毎日大行列ができるので必ず開店30分前から並ぼう。ここは壇一雄が「うんまぁあい!!」と言ったとか言わなかったとかですごく有名な店です。
確かにうんまいよ、焼きそばもとても美味しいのでぜひ。

あぁラーメン食べて良い気持ち、尾道にはなんと有名なアイス屋さんがある、洒落ているじゃないか、食べねばなるまい。すなわち「からさわ」でござる。尾道の人はデートにからさわ、お詫びは桂馬(美味しいかまぼこ)、これ常識で、からさわは持ち帰りにしてアイスモナカを頼もう、これが美味である、で海岸で海を見ながらほおばるのである。

あ、カップルだ、うぜえな

うまうま…、からさわのアイスうまうま

寄せては返す大波小波、波が引くと海辺から石の台座が見えてくる、お、木の看板に解説が書いてあるぞ、なになに…

「俳人関氏来遊の際この石にちょこんと座り海を見て、暑いと呟く。記念に、この台座をセキセキと名付ける、なでなでしてね」

石の台座の上をヤドカリが散歩している、のどかだなぁ。ん?「セキセキ」に句か彫ってあるぞ…

●尾道は「かみちゅ!」の聖地されど暑い
関悦史

おぉ、なんと格調高い、この句を見てから麒麟が本屋へ走り「かみちゅ!」を全巻(二冊だけど)買ったというのだけは嘘でないらしい。関さん、なかなか良い漫画でござりました、千両千両。

尾道のみどころの一つは、商店街から海に抜ける小さな路地、これがなかなか良い味なのだ。僕が友達に尾道の写真を送る時は大抵そんな路地の写真だ。

●路地曲り来る海風に水打てり
小川春休

広島を代表する俳人、春休さんの句碑である。春休さんはいつも麒麟の無茶なお願いを優しく聞いてくださる素晴らしい俳人でござる。僕は近くに広島の俳人をあまり知らないので勝手に親しく感じています。

その徳を忘れぬために、広島県内では学校の春休を二ヶ月にしようよ、と提案してみたところ、麒麟はやはりグーで殴られてしまったのも、もう何年も昔の事となりましたねぇ…。

さと路地の話に戻ろう、オススメは「うず潮小路」と「石畳小路」、綺麗な石畳で、雨に濡れるとなお良い、そんな時思い出すのはあの名句である。

●夕立のあとの夕焼坂の町
村上鞆彦

まさに最高の瞬間、この句は句碑となり、尾道市民のもっとも愛する俳句となったわけですが、うらやましく思った麒麟が、その横に

●夕焼雲尾道は今鐘の中
西村麒麟

と傑作の句碑を建ててみたところ、三日のうちに句碑は壊され、その場所へ自販機が建てられていました。

僕はコーラを買いました。喉がシャワッとします。

そうそう、近年新たな観光名所になっているのが、かの御中虫氏作「尻に薔薇」と名付けられたブロンズ像でござる。なぜかお尻に薔薇を挿された(刺すとは言うまい)青年が苦悶とも快感とも言えぬなんとも言えぬ表情で句帳に句を書き記している、というユニークなもので、この薔薇に触れると痔が治るとやらで毎日参拝者が絶えないというのだからさすが虫さんと言ったところだろう。

傍らの句碑は麒麟めが勝手に建てたもの

●尾道の麒麟へ赤道の薔薇挿す
御中虫

虫さんにはいつもお願い事ばかりしているが、「も~」と言いつつサクッと叶えてくれるあたり、あぁありがたやありがたや。

アップされる頃大分過ぎちゃうけど、虫さんも誕生日おめでとうございます、パチパチパチ♪

さてさて、麒麟を育てた母なる土地、尾道最大の観光名所千光寺へ、僕は毎年実家に帰る時は必ず訪れ、千光寺山の頂上から海を眺めては大志を抱くのだ、僕の他はみなカップルであってもそんな事は関係ないのだ。

昔々千光寺山の岩の上には夜毎に光る大きな不思議玉があって、その光りのおかげで近海の船は尾道をまっすぐ目指せたとかなんとか、という伝説があり、だから尾道の事を「玉の浦」と言うとか言わないとか

僕の小学校の校歌が確か…

か~ぜはさやけし~♪た~まのうら~♪

であったが、小さい頃は「金玉医者」的なあれの事かと思ってました。

男の子は馬鹿なぐらいが良いんです。

さぁ、千光寺へはロープウェイで行けますが…。はい、あなた、そう、あなた、俳句のヒトね、歩いて登るがヨロシ、句碑、歌碑たくさんアルね(ほんとは岩に彫ってある)、ミルよろしよ。

と言う事で千光寺へは歩いて登ろう、帽子嫌いな僕が(似合わないから)帽子を買ってタオルを首にまくほど、千光寺への道は険しく暑い、ほんと暑い。

ちなみに僕の実家も坂のはるか上にあるので、救急車とかは来れません、えぇ担架が来てくれます、いやいや、普通ですから。

志賀直哉旧居(たまに猫がいる)、文学記念室(近くに猫がいる)で麻生路郎(川柳六大家、尾道生れです)の色紙など見て、中村憲吉旧居(やはり猫がいる)に行こう。

これらの名所も僕は毎年行くけれど、僕以外の誰が喜ぶんだろ…、マニアックだなぁ、そして猫がいて大丈夫かな(中村憲吉旧居で猫が走ってた!)、と心配になる。

だから俳人も歌人も柳人も小説家も観光客(ありがたや)もぜひ歩いてこれらの名所を訪ねて欲しい。別に僕が潤うわけでもないけれど、それでも嬉しい。

特に猫好きの方は必ず来ていただきたい。山川さんぜひ、悦花さんぜひ。

僕があちこちの石に刻まれた句や歌に興味を持ってありがたく眺めるようになったのはここ数年の事ですが、よくよく見れば味わい深い。

●のどかさや小山つづきに塔へ二つ
正岡子規

瀬戸内に来れば、「のどかさや」がよくわかる

●あれは伊豫こちらは備後春の風
物外

物外和尚は通称拳骨和尚、尾道では有名人です。

ちなみに僕が毎年お墓参りをする、小林和作画伯は通称天丼画伯、絵のお礼に天丼を所望した(相手が高額の代金を払えないため)という逸話から。

●海が見えた。海が見える。五年振りに見る尾道の海はなつかしい、汽車が尾道の海へさしかかると、煤けた小さい町の屋根が提灯のように、拡がって来る。
(放浪記より)
林芙美子

尾道一の有名人はなんと言っても林芙美子さん、林芙美子像、とても美しいのでぜひ写真を撮ってください。ちなみに僕の高校の先輩であります(自慢)。ちなみにこの文章、日本中で僕ほど目にしている俳人も少ないと思うけれど、読むたびに泣けます。福山からローカル線に乗り換えて尾道へ向かう電車の中で、灯が揺れて見えるたびにこの文を思い出します。

●千光寺に夜もすがらなる時の鐘耳にまぢかく寝(い)ねがてにける
中村憲吉

尾道の人はこの歌を知っているんだろうか、憲吉ファンはこの歌を知っているだろうか、僕はなかなか、じーんと来るのですが…。

ちなみに千光寺の鐘は良い音であり、良い音百選とかなんとかに入っているらしい

●千光寺の御堂へのぼる石段はわが旅よりも長かりしかな
吉井勇

そうそう、千光寺とはそういうところ

!!!スマホの容量いっぱいらしいので、えー、続きにしよう、また来週。

真実も嘘あるもんか、クレームは受け付けませぬ、くれぐれも野暮はダメです。
ではでは

ばーい