「たかくとぶ」 江渡華子

「たかくとぶ」

鹿の目や少年の目や笑つて笑つて
弾いてゐるのは兄だらう雁たかく飛ぶ
兜煮の頬肉ほぐす秋時雨
オリーブの黒きものだけを選りぬ
影の丈はかりて失敗して夜寒
団栗のあと追ふやうな旅路かな
鳳仙花嗅ぐときひざまづく母よ