2015年7月30日

こでまりの木の肌のこの夏の痩せ

この連載はほんとうはもっと統一性のあることを書く気だった。古い映像や音声を引っ張り出して来て何か喋るというのを予定していた。その片鱗は何回か分に現れている。古いものがとにかく好きで、それについてまとまった量のことを書いておくのは素人趣味にしても悪いことではないと思った。

・れきおん(http://rekion.dl.ndl.go.jp/

国会図書館が有している歴史的音源を視聴できるサービス。古い音楽や音声がたくさん入っている。少し前まで国会図書館に行かないと聴けなかったが、いまではアクセスできる場所が増えてきた。

筑波大学の中央図書館もその一つに指定されたので、いろいろ聴こうと楽しみにしていた。ところがいざ時間を作って受付に行ったのだが、専用PCのメンテナンスが出来ていなくてしばらく利用できないという。めったに人のこないサービスだったらしい。アテが外れてしまった。

・NHKアーカイブス(http://www.nhk.or.jp/archives/

過去の放送の一部が「番組公開ライブラリー」として視聴可能になっている。各放送局に行って申し込めばその場で専用機器の前に通される。あらゆる番組が網羅されているわけではないが昔の役者の顔を見られるので重宝する。

最寄りの放送局は東京か水戸かだった。北海道にいた高校時代は学校の帰り道に旭川放送局があったのでよく寄ったものだが、つくば市に越してからは交通費が厄介で足を運んでいなかった。いい機会だから連載の前に見ようと思って水戸まで行った。ところがなんともうっかりしていて休館日だった。結局そのご忙しくなってしまって二度目の水戸へは行けなかった。やはりアテが外れた。

そういうわけで本来の計画とは少し違うことを書いたのだった。

夏休みに、また行こう。読者のみなさんもぜひ。

これはただの余談なのだが、NHK水戸放送局に行った日、友人の坂入に会った。坂入は茨城で俳句を書いている人で、おれの一つ下だった。バカなので受験期に俳句にかまけて大学に落ちた。それで筑西の自宅から水戸の予備校に通っていた。水戸に行くと言ったら会おうと返事が来た。お前受験生だろうと言ったら「1日中勉強してるわけないじゃないですか」と怒られた。それでNHKに行く前に会って千波湖を歩いたりメシを食ったりした。

彼女が茨城の女子高生として俳句を書き始めたのは高校三年生のときで、同じ時期におれは茨城に引越した。そういうわけでおれはこの人に縁を感じ、えこひいきしていた。そういうことに意味を見出すタイプだった。電車で45分で東京に行ける自分を「地方で頑張ってる若手」だと思ったことは一度もないが、自分が茨城にいることには大きな意味があると思っていた。それはただのカンで、大学を卒業するころにはもう少し分かることも増えているんじゃないかという気がしている。

よく喋る後輩と別れたあとでNHKに行ったら休館日だった(何度思い出してもウケる)。脱力してその旨を坂入にLINEで伝えたら「じゃあまた予備校抜けます」と返事が来た。そんなんだから大学に落ちたんじゃないかと思いつつ、駅のスタバでまた会った。それから二時間くらい俳句の話をしてやっとバスの時間になった。バスは一日に三本しかなかった。帰路、バスは県庁の前を通った。行くときはうっかり見過ごしていた。これが茨城県庁かとしみじみした。県庁にしみじみする人間なのだった。