秋昼寝『高濱虚子』と詠まれし句
個人的に、知れば知る程、不信感のようなものが募ってゆく俳人が、高浜虚子(1874~1959)といえようか。
以前は、ある種の人たちが、なぜあそこまで虚子のことを憎むのか、やや不思議にさえ思っていたのであるが、俳句の歴史を少しばかり辿ってみると、段々とその心情もいくらか理解できるような気も……。
現在、虚子に対しては、少々複雑な思いがする、というのが正直なところではある。
『高濱虚子』は、虚子の弟子であった水原秋櫻子(1892~1981)の著作である。
秋櫻子の俳句に興味を持ちはじめた頃から、虚子より独立するまでの出来事を回想して綴ったもので、1952年に文芸春秋新社より刊行された(私の手元にあるのは、1990年に刊行された永田書房の『定本 高濱虚子』)。
当時、この本が刊行されると、虚子は、
老の春「高濱虚子」といふ書物
と詠んだという。
ともあれ、虚子の功罪の大きさというのは、やはりどちらも並外れたものがあるだろうなあ、という気がする。
小夜時雨上野を虚子の来つゝあらん 正岡子規
虚子一人銀河と共に西へ行く 高浜虚子
初空や大悪人虚子の頭上に 高浜虚子
虚子ぎらひかな女嫌ひのひとへ帯 杉田久女
春空に虚子説法図描きけり 阿波野青畝
虚子忌はや落花の浄土なまぐさし 飯田龍太
朴茅舎椿の虚子と争わず 和田魚里
鉦叩虚子の世さして遠からず 波多野爽波
虚子もなし風生もなし涼しさよ 小澤實
虚子の忌の喋る稲畑汀子かな 関悦史