2011年6月27日

犬になる途中のものの硬さかな

ハナは、僕と弟が大泣きして両親に頼み込み、
ようやく飼うことができた犬だった。

まだ生まれたばかりの仔犬だったハナはとても可愛く、
小学校から大急ぎで帰っては、毎日一緒になって遊んでいた。

やがてハナが成長すると、仔犬特有の可愛らしさは消え、
僕と弟の関心も徐々に失せていき、
朝夕の散歩は父の役目になった。

仕事が遅くなった日も、雨や雪の降る日も、
父はハナの散歩を欠かすことはなかった。
父が近づいていった時にだけ、
ハナは仰向けになり、お腹をむき出しにして父に甘えた。

父が死んだ。

僕はその時すでに上京しており、
ハナの散歩は母と末っ子の弟が代わる代わるに担当することになった。
しかし、毎日欠かさずというわけにはなかなかいかなかったようだ。

去年の冬、ハナが死んだことを母からのメールで知った。
予兆は何もなく、ある朝犬小屋の前で眠るように死んでいたという。

連絡を受けてしばらく呆然としたが涙は出なかった。
しかし、何か判然としない気持ちだけが澱のように残った。

以下、犬の登場する句をいくつか。

梅雨の犬座敷を通り抜けにけり     相島虚吼
露寒や乳房ぽちりと犬の胸     秋元不死男

犬よちぎれるほど尾をふつてくれる     尾崎放哉

炎天の犬捕り低く唄ひ出す     西東三鬼

橇をひく犬立ち止り主見る     高野素十

犬交る街へ向けたり眼の模型     田川飛旅子

犬の舌枯野に垂れて真赤なり     野見山朱鳥

犬が臥て横向きの顔秋の山     波多野爽波

夏休み犬のことばがわかりきぬ     平井照敏

出征ぞ子供ら犬は歓べり     三橋敏雄

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