2015年11月30日

冬籠る輪ゴムを長方形にして

松山は、温暖で雪が積もることが滅多にない。それで、十年以上前の積雪の朝のことをよく覚えている。

いつもより早く出て、通勤バスを待っていた。
バスは、あたり前のように来なかった。
バイクが目の前で転倒したり、進まないタクシーを捨てて歩き出す人を見遣りながら、四つ先のバス停まで「歩こうか」と思い始めた。が、「歩き出したら来ちゃったりするものだし」と、凍った雪の上で足踏みしながら踏ん切りの悪い性格を発揮していた。
小一時間するとふと、額の上あたりに「凍死」の二文字がぽっかりと浮かびあがった。現実の言葉として、体感し得た朝のこと。