2012年6月29日

階段の先に白雲芥子の花

(承前)

結婚する人を夢に見たいとは全く思わなかった僕だが、ミッドサマーで僕を魅了したのは、またしても歌だった。僕は芝生の上で楽しくピクニックしている友達から離れ、ステージで行われていたスウェーデン人とセネガル人のコンサートを聴きに行った。MCで英語を話しているが、歌の歌詞はスウェーデン語と、それから聞いたことのない言語である。見たことのない、まるまるとしたギターのような弦楽器は興味深く、そしてスウェーデン人とセネガル人のハーモニーは心地よかった。

印象的だったのはスウェーデン人のボーカルの「私は、数年前アフリカ音楽に興味を持ち、セネガルに音楽を勉強しに行きました。そこで、たくさんの人に『あなたの音楽のルーツは何?』と聞かれて、帰国してスウェーデンの楽器ももっと勉強しようと思ったのです。」という言葉だった。日本とさほど関係ないような遠く離れた二国間の関係を知ることは面白い。例えば、意外と知られていないことで特筆すべきことだが、スウェーデンはタイとの関わりが非常に強い。あらゆる場所にタイ料理レストランがある。スウェーデン人のバカンスに選ぶ行き先一位はバンコクである。

こうした、世界各国の様々な側面における状況を垣間見て、広い視野に立ち、自分の国と比較する姿勢のことを、僕は「世界マインド」と呼んでいる。日本にいるおどりサークルの先輩が「『世界』って、ずるいよな。」という意味深なセリフを僕に漏らしたことがあるが、「世界マインド」を身につけるとその「ずるい」がより具体的になる。ネットやテレビなどで伝えられる世界の文化・社会状況は、海外経験のない、もしくは少ない日本人にとっては魅力的に感じられる。これは確かに「ずるい」。なぜなら、それらは彼らにとって知らない、遠く離れた世界だからだ。しかし、たとえば実際にスウェーデンの大学を見学・訪問したり、スウェーデン人とスウェーデンの教育における問題を議論したりすると、表面的でない、現場の問題も知ることができる。学校教育においては、少人数制度は先生が生徒全員をチェックできて魅力的だが、日本よりもクラス内において個々人の学力に大きな差があり、高校に入っても二次方程式もできない生徒も多いらしい。

最近、物事を考えるときに「世界基準で考えると」とか、「○○人の考え方なら」というフレーズを、頭の中に自然と置くことが多々ある。英語などの語学力は前提条件として非常に重要だが、僕が一番獲得できて良かったと思えるのは「世界マインド」ではなかろうか。これだけは、ニュースを読んでいるだけでは得られない。