にんげんはからっぽの箱草の花   神野紗希

急に、さみしいことをいう。「からっぽ」だなんて、本当にさみしい。でも、この平仮名で書かれた「にんげん」は、どこか現実味を帯びていなくて、架空の「にんげん」のような感じがする。人間を「箱」とする、このありはしない把握がそう思わせているのだろうか。

そして、「草の花」。地味な可憐さと強さをもつ。上五中七のさみしい指摘に、力を与えてくれているような、そんな味わいがある。

紗希さんの句によく登場する少女が、(なぜか)神様的ポジションという遠いところから、語りかけているような感じがした。そして、冷たくもなく、寂しくもない、空虚感がある。