外よりも暗き玄関夏の雨 江渡華子

さて、前回「措辞を生かすために内容がある句 と、 内容を生かすために措辞がある句の2パターン が存 在すると思っている。」と書いたけれど、掲句な んかはその前者にあたる句なんじゃないかと思 う。この句に描かれている世界は、別に作者に固 有のものではない。そこからストーリーが派生し ていきそうな雰囲気は持っているけれども、おそ らく作者が描きたいのはそこではない。この句の 魅力は、この句の発見とそれを生かす構成にある。
まず、「外よりも」という抽象度・雰囲気感の高 い表現からゆるゆると句が始まり(「庭よりも」 「道よりも」などと比べるとその抽象度がわか る)、「暗き玄関」と一気に具体度を上げ、か つ、さきほどの「外」の指示する対象を限定す る。最後に「夏の雨」と雰囲気感の高い世界に転 換し、それまで述べた事項に対する説得力を増す のと説明に陥るちょうど中間あたりの季語を持っ てくることで、夏の涼しさの余韻を残して句が完 結する。
このように、もちろん物語性も措辞の巧みさも華 子さんの持ち味なんだけれど、華子さんの本当の 魅力って、もっと「変」なところにあるような気 がしてならない。次回は、その華子さんの「変」 なところを紹介したいと思います。 (「家出」2012.05より)