時計の中に去年も今年も来年も   野口る理

3人の俳句を一か月読んできて、それぞれ大きく異なると思ったのが、作中主体と作中世界の構築のあり方だった。
紗希さんは仮想的に構築された作中世界の登場人物として作中主体を演出し、
華子さんは現実世界と作中世界の差異を意識させないように作中主体と作者の距離を縮め、
る理さんは思考の中に生まれた世界の語り部として作中主体を配している。
それぞれが句風を模索する中で、過去の作品を学び、未来を指向しながら自分の現在作れる最高の俳句を作ろうとしている。
時計に限らず、万物は過去、現在、未来をその中に宿しているのだと思う。

1か月間、楽しく、嬉しく、書かせていただきました。
場を与えてくださったスピカのみなさん、読んでくださったみなさん、本当にありがとうございました。

「ほくろ」(2013.01)より