蜘蛛に生れ網をかけねばならぬかな  高浜虚子

蜘蛛に生まれてしまったからには、網をかけて虫を捕縛しなければ生きていけない。しばしば、蜘蛛の巣は残酷なものの象徴としていわれるけれど、本人は、ただそう生まれたので生きているだけなのである。

  

「かけねば」に、運命とか宿命という言葉が思われる。新しいことを発見した句というよりも、昔からみんなが思っていたことを、ぐわりと十七文字で掴みだしてきたような句だ。直球ど真ん中である。蜘蛛を例に挙げて、さて我々は、というところを示唆しているのも、俗のパワーだ。

   

句集『七百五十句』所収。

  

ウェブマガジンの週刊俳句が、はじめて出した紙の本、『虚子に学ぶ俳句365日』。虚子の俳句を一日一句365日分、若手俳人の鑑賞分とともに紹介している。掲句は、この本の中で今日、6月19日の頁に紹介されている。鑑賞の執筆者は相子智恵氏。彼女の紹介したエピソード、俳句になる物事をじっと待つ虚子を、弟子の京極杞陽が「蜘蛛のようだ」と言ったというのも、面白い。

  

スピカでも、『虚子に学ぶ俳句365日』、1500円(本体価格のみ/税・送料無料)にて販売してます。ご希望の方は以下のアドレスまで。

  

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