プールという場所は、祭りのようなものだ。歓声があがり、水しぶきが舞い、みんなが身を寄せ合いながら夏を謳歌する。そんな祭りの空間で、ふとともだちを見失ってしまったときの、どこにも居場所がないかんじ、あの不安感、疎外感。やっとともだちにめぐりあえたときの、心底ほっとするかんじ。プールから帰ったあとには、一日の思い出の中で、そんな瞬間のことはすっかり忘れて眠ってしまうのだけれど、あるとき、いつかどこかで、あのぽかんとした時間のことを、ふと思い出すことがある。
そもそも、ともだちと一緒になんて、来てないのかもしれない。大人になって、流れるプールを見つめながら、流れてくるはずもないともだちのことを、過去の記憶から掘り起こしているのかもしれない。その立ち尽くしは、なにかを失ってしまった者のそれにも似ている。
俳誌「炎環」所属の俳人5名によるアンソロジー『炎環新鋭叢書シリーズ5 きざし』(ふらんす堂 2010年9月)所収。