まだ小さき紫陽花の毬ノクターン  神野紗希

高校時代、姉に連れられて何度か小劇団の芝居を観に行ったことがある。そのうちの一つに「ノクターン」(関秀人作・演出、立身出世劇場)という芝居があった。過去の友情、恋愛を微妙に左右されながら生きる喫茶店の女主人の話。その喫茶店の隅にピアノが置いてあり、そのピアノを弾くひとと向かい合わせになるように、ドラクロワ作のショパンの肖像画が掛かっている。いつもサボり来ている画廊の店主が言う。この絵はかつて、ショパンと恋人ジョルジュ・サンドが並んで描かれていたのだと。しかしそのあと二人は別れ、絵も二分化された。このショパンの顔はどことなく、別れを予感させるような、憂いた顔している。

あとから分かることだが、だいたいドラクロワの作品は暗い。それにショパンは繊細だから、普段からそんな顔だったんじゃないか。でもそのときの印象が強く、しかもノクターンが暗転の度に流れていたので、ノクターンを別れの曲とインプットされてしまった。

まだ毬は小さい。が、これから大きくなる毬は何色になるのだろう。さみしい色でなければいいのだが。

2013.7.1「急ぐ」