山田さん、川野さん、中山さん、吉川さん……。日本人の苗字には、「山」「川」の字がまことに多い。「あるある」と頷く楽しさの向こうに、かつてその苗字を名乗り始めた私たちの祖先の誰彼は、みな山や川のそばに住んでいたのだという気づきが待っている。かつての山川のそばの暮らしの記憶は、もはや歳時記の奥処にしまわれようとしている。「行春」という過去を惜しむ季語に触れ、苗字にのみ残った山川の記憶に、ふと切なくなった、そんな春の終わり。
「俳句」(角川学芸出版 2014年7月号)50句作品「夏野行く」より。
山田さん、川野さん、中山さん、吉川さん……。日本人の苗字には、「山」「川」の字がまことに多い。「あるある」と頷く楽しさの向こうに、かつてその苗字を名乗り始めた私たちの祖先の誰彼は、みな山や川のそばに住んでいたのだという気づきが待っている。かつての山川のそばの暮らしの記憶は、もはや歳時記の奥処にしまわれようとしている。「行春」という過去を惜しむ季語に触れ、苗字にのみ残った山川の記憶に、ふと切なくなった、そんな春の終わり。
「俳句」(角川学芸出版 2014年7月号)50句作品「夏野行く」より。