富士山の雪の色して志   武藤紀子

富士山の雪の色をした志とは、なんと高潔で、美しく輝くものだろう。「した」ではなく、「して」と、「志」の前に軽くひと呼吸おいたことで、比喩から子どもっぽさが消えた。

作者が主宰する俳誌「円座」創刊号(2011年4月)より。

中村雅樹氏の連載「橋本鶏二覚書(1)」が面白かった。橋本鶏二の略歴について、丹念に資料を探して考察しているのだが、これまで、小田尋常小学校を卒業したと思われていた鶏二が、実際は、となりの上野町立男子尋常高等小学校だったということが分かったそうだ。大正13年の、その小学校の同窓会誌に、鶏二の本名が、卒業生として記されていたのだという。全句集の略年譜をはじめ、辞典や年譜に記載されている学歴は、間違っていたということになる。こうした地道な調査の結果が読めるのは、依頼にこたえるかたちで執筆する総合誌に比べて、比較的自由に書きたいことを書くことのできる、結社誌ならではの楽しみという気がする。

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