片膝の汚れてゐたる秋遍路  田草川功子

歩いてくる遍路の白装束の、片膝が汚れている。道端に何かを見つけて、片膝をついて覗き込んだときに、汚れたのだろうか。私は、草むらから鈴虫の声でもしたのではないかな、と思った。親しい気持ちがわいて、姿を見ようと、ふとかがみこんだのでは。「汚れ」という言葉とはうらはらに、自然に対して開かれた、清らかな心を感じた。

第一句集『弓弦』(ふらんす堂 2014年9月)より。