いま鎖切れしと思ふ稲光  石川陽子

稲光はきっと、雲の上で稲光をつないでいた鎖が切れたから、地上に落ちるのだ。そんな童話的な発想もなんとなく納得できてしまうのは、稲光の特徴が、いかにも勢いがあり、何かに解放されたかのような光だからではないだろうか。鎖は、捕えたものを逃がさないためのものであるイメージが強い。人間を脅かすものを、雲の上に捕まえておいたのに、その鎖が切れてしまった。鎖が切れるほど、稲光が暴れたようにも思える。稲光によって切れた鎖の重さやスピードが地上に落ちているのではないかとも思える。

句集『山の水』(2014年 ふらんす堂)より。