稲妻や箒にのこる母の癖  櫂未知子

箒のなかでも、竹箒は特に、持ち主の癖がその形へと出やすい。あれ、なんか使いにくいなと思い、箒を見ると、どこかしらに圧力がかかり、歪んでいる。そこでようやく、「あぁ、母はここに力をかけて掃除をしていたのだな」という思いに至るのだ。母の箒だったものは、母が使わなくても、持ち主を待つように、持ち主の癖を残す。あぁ、何だか淋しいかも、という思いは秋の淋しさに増幅される。しかし、「のこる」がひらがなであることから、癖を見つけたその時の作者が穏やかだったことが見える。また、稲妻という激しい季語にせかされて掃除をしつつも、切れ字を使用することで、母が箒と稲妻に距離を生み、守ってくれているのではないかという思いにまでなる。

『俳句2014年11月号』(角川学芸出版)より