銅像が手を挙げている雪の町  小川紫翠

すでになきスターリンの像を思い浮かべたが、どんな像でもかまわない。銅像の手を挙げているポーズは、何かを主張し述べている姿だ。だから手を挙げている銅像は、あるイデオロギーと結びついた建造物ではあるのだろう。そのイデオロギーがすでに忘れ去られて久しいむなしさや厳しさが、町に降り続ける雪によって示唆されている。

銅像が永遠に手を挙げている、永遠に降り続きそうな雪の町。止まってしまった時間を形象化すればたとえばこういう風景になるのだろう。

『蔵の窓』(文学の森 2014年11月)より。